早崎法律事務所

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交通事故の加害者の法的責任について

交通事故を起こしたとき、加害者は

「民事上の責任」
「刑事上の責任」
「行政上の責任」

の3つの責任を問われることになります。

事故によっては、これら3つの責任全てを問われるケースもあれば、
刑事責任は問われず、民事と行政の2つの責任を問われるケースもあります。

例えば、自動車を運転中に何十㎞ものスピード違反で歩行者をはねてしまった場合、
被害者に対して損害を賠償することにより、民事上の責任を負います。

また、大きな危険を伴う運転で歩行者を負傷または死亡させた場合には、
危険運転致死傷罪で刑事上の責任を問われますし、
違反切符を切られて行政上の責任を負います。

これら3つの責任について、詳しく見ていきましょう。

民事上の責任

交通事故における民事上の責任は、
民法709条と自動車賠償保険責任法(以下、自賠法といいます)
の2つの法律が適用されます。

民法709条は、交通事故に限らず、
民事上の不法行為全般の損害賠償責任について規定しています。

ただ、この規定だけでは、加害者に故意・過失があることや、
損害の発生を証明しなければならないだけでなく、
加害者及び自動車の使用者以外の責任を追及できません。

このため、加害者が無保険であったり、
資力がなかったりした場合、事実上、救済されません。

このような場合には、自賠法を適用させて民事責任の解決を図ります。

自賠法は、交通事故に遭った被害者を保護するために設けられた法律で、
たいていの損害賠償請求は自賠法に基づいて行われています。

自動車事故の多発に伴い、民法だけで被害者の保護が難しくなったため、
昭和30年に自賠法が制定されました。

人身・物損事故のいずれにしても民法709条の不法行為にあたる可能性が高いので、
はじめは民法による事故の解決を図ります。

ただし、人身事故の場合は民法より自賠法が優先されます。
すなわち、人身事故で自賠法の規定に適用できないとわかった時点で
民法の適用が検討されます。

自賠責保険は、法律で加入が義務付けられており、「強制保険」とも呼ばれます。

基本的に自賠責保険に加入していない自動車は公道を走ることはできず、
未加入だった場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

ですから、たとえ加害者が任意保険に加入していなかったとしても、
被害者は自賠責保険によって最低限の補償を受けることができます。

刑事上の責任

刑事上の責任では、刑法または道路交通法の規定により、
警察が事件を捜査し、検察官が起訴し、裁判所が刑罰を科します。

刑法では、211条の業務上過失致死傷罪が適用され、
5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
(危険運転致死傷罪もあります)

殺意を持って人を轢いた場合は、
殺人罪によって死刑または無期もしくは5年以上の懲役となります。
(刑法199条)

しかし、悪質な運転事故にもかかわらず刑法の規定だけでは適用が難しく、
軽い刑罰しか科されないことから法体系が見直され
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)」が成立し、
加害者により重い刑事責任が課されるようになりました。

また、飲酒運転や事故があったときの負傷者の救護、
危険防止措置、警察への届出義務など違反などがあった場合は、
道路交通法が適用されます。

これらは刑事上の責任ですから、懲役、禁錮、罰金などの刑罰が科されます。

なお、物損事故の場合、刑事上の過失責任を問われることはありませんが、
道路交通法116条の過失建造物損壊罪に問われることがあり、
6か月以下の禁固または10万円以下の罰金に処せられます。

行政上の責任

スピード違反や信号無視など、
交通違反があったときに違反点数が課されるのと同様に、
交通事故を起こした時も違反点数が加算されます。

これが交通事故における行政上の責任です。

違反点数が一定以上になると公安委員会により免許の停止、
免許取り消しなどの処分を受けます。
刑事上の責任のような禁錮・懲役といった刑罰は科されませんが、
一定の点数を超えると「交通反則通告制度」に基づき反則金を支払わなければなりません。

交通反則通告制度とは、多発する交通違反を迅速・簡易に処理するための制度です。
軽い交通違反の場合に反則金を科し、
反則切符を切られた日から7日以内に指定の場所で反則金を納めれば刑事訴追を免れます。

ただし、次の場合には交通反則通告制度は適用されません。

・交通事故を伴う反則行為
・飲酒運転による反則行為
・無免許、無資格運転者による反則行為
・30km以上(高速道路は40km以上)の速度超過
・反復違反者による反則行為

これらは道路交通法違反として、行政上の責任ではなく、刑事上の責任を問われることになります。

なお、7日以内に反則金を支払わなかった場合、警察本部長から通告を受けます。

通告書を渡された日、または郵送された日の翌日から10日以内に収めなければ裁判にかけられ、
罰金が言い渡されます。

反則金の段階では前科はつきませんが、罰金になると前科が付きます。

それでも罰金の支払いがなかった時は、罰金額に達するまで強制労働に服することになります。

このように、交通事故を起こした時には3つの責任が問われます。

どのような事故でも、民法または自賠法による民事上の責任が問われることがほとんどです。

交通事故を決して甘く見てはいけません。
交通ルールを守って安全運転を心がけましょう。

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