目次
●「家族信託」とは
「家族信託」とは、「財産管理」の一つの方法です。
資産を持つ人が、自分の資産を信頼できる家族に託し、
その管理や処分を任せる仕組みです。
元気なうちに、自分の老後の介護などに関する自分の意思を決めておき、
その自分の意思に従って、必要な資金を必要に応じて支出できるのが特徴です。
家族や親族に管理を託すので、高額な報酬は発生しません。
資産のある人だけのための制度ではありません。
誰にでも気軽にできる相続対策として注目を集めています。
「家族信託」は2006年に信託法の改正によって生まれた新しい財産管理の方法です。
信託銀行に依頼しなくても、
営利を目的とせず特定の人から1回だけの信託であれば、
免許なしで誰でも「信託」を受けられるようになりました。
「家族信託」には、「委託者」、「受託者」、「受益者」の三人が登場します。
場合によっては「信託管理人」、「受益者代理人」が加わりますが、
まずこの3者の関わりから理解しましょう。
「委託者」は、財産や遺産管理などの「信託」を依頼する人です。
「受託者」は契約に基づいてその信託財産の管理・運用・処分などの依頼を受けた人を指します。
「受益者」は、その信託財産の管理・運用・処分などで得た利益を受け取る人のことです。
「委託者」と「受益者」は同じ人の場合が多いようですが、
「受益者」を「委託者」が指定し、またその受益の内容も細かく指定できるができます。
家族信託は、この「受託者」を信託銀行ではなく、家族や親族とするものです。
成年後見制度
同じように自分の資産や財産を守る仕組みとして「成年後見制度」があります。
いくつかのメリットもありますが、
資産を守ることが主な目的なので積極的な運用ができない、
家庭裁判所への届け出や報告が必要などのデメリットがあります。
●「家族信託」のメリット
メリット1 「成年後見制度」に代わる柔軟な財産管理
「成年後見制度」に代わる柔軟な財産管理を実現できます。
「成年後見制度」は裁判所の監督下で行うもので、積極的な財産運用は事実上困難です。
「成年後見制度」とは違い、健康なうちから資産の管理・処分を託すことで、
本人の指示に基づく財産管理ができます。
また、「成年後見制度」では難しい積極的な資産運用などが、
受託者の責任と判断で可能となります。
メリット2 「財産承継」の順位付け
「財産承継」の順位付けが可能になります。
「家族信託」では、最初に指定した受益者が突然亡くなっても、
次の受益者を誰にするという指定ができます。
メリット3 「倒産隔離の機能」
「家族信託」には「倒産隔離の機能」があります。
将来自分や受託者が「信託財産に関係のない部分で多額の債務を負っても、
信託財産は差し押さえられない」という「倒産隔離機能」があります。
メリット4 「教育資金の贈与」
教育資金の一括贈与が1500万円まで可能になります。
孫の教育資金を1500万円まで非課税で贈与できるという制度が2013年から始まりました。
信託銀行などを通さず、「家族信託」で、孫の教育資金の贈与をすることができます。
以上簡単にメリットに触れてきましたが、
ほかにも不動産の共有問題や、二次相続の問題などで、
この家族信託のメリットがあげられています。
●「家族信託」のデメリット
注意する点は、「家族信託」は、
財産管理や処分に必要な行為を行う旨限定されているという点です。
「成年後見制度」のように、本人の生活環境を整えるといった身上監護については、
「成年後見人」でなければできない場合もあります。
「受託者」を誰にするかは重要です。
「家族信託」における「受託者」の権限は非常に強いものがあります。
しかし、成年後見制度のように、裁判所の監督はありません。
誰を「受託者」として選定するかについては、慎重に決定する必要があります。
ほかにも、高い節税効果は期待できないこと、
相続の際は遺留分でトラブルになる可能性があることなどがあげられます。
●「家族信託」を選ぶ方が良い人とは?
まず、遺言以外の「財産承継」方法を検討している方があげられます。
遺産相続が発生した時に、資産の凍結を避けたい場合などに有効です。
突然の判断能力の低下に備えた対策を考えている人にもお勧めです。
「成年後見制度(法定後見)」は、判断能力が衰えた後でなければ利用できません。
一度「成年後見」の認定を受けると、
投資や不動産の売買などの積極的な資産運用が難しくなります。
「家族信託」では、そうした事態に備えた対策を立てておくことができます。
「事業承継」対策を講じておきたい人も検討をお勧めします。
「事業承継」のために、遺産の遺留分対策や、持ち株の分散を防ぐ対策として、
事業を子どもに継承したいと考えている場合、
「家族信託」で必要な対策をとることが可能です。
最後に
相続に関しては、「事業相続・事業譲渡」、「遺言書」、「成年後見制度」、「家族信託」などいろいろな方法や対策があります。
専門的な分野が多く、どれが、自分の相続にむいているのかを判断するのは難しいと思います。
弁護士などの専門家に相談をして、それらを参考にしましょう。